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『ラブキャッチャージャパン3』を見ていて、途中で気づいたことがあります。
この番組のルール、誰かが毎日そのまま生きている状態とまったく同じ形をしています。
「不安型」と呼ばれる愛着スタイルの人が経験している世界のことです。番組はそれを、ゲームとして人工的に作り出しています。
ルールを、もう一度ばらして見る
『ラブキャッチャージャパン3』は、沖縄で12人が共同生活を送りながら、それぞれが自分の立場を隠して過ごす番組です。賞金は1,000万円。毎週火曜よる9時、ABEMAで全8話。
参加者が置かれている条件を、恋愛の話としてばらすと、こうなります。
| 番組のルール | 参加者が置かれる状態 |
|---|---|
| 相手がラブかマネーか分からない | 相手の気持ちが本物か確認できない |
| 正体を聞いても、正直に答える保証がない | 確かめる手段が存在しない |
| 疑っていることが伝わると関係が悪くなる | 確かめようとすると、関係のほうが壊れる |
| 最終回まで結論が出ない | 宙づりのまま過ごすしかない |
この4つが揃った状態を、番組は「疑心暗鬼の世界で人間の本性があらわになる、究極の恋愛心理ゲーム」と呼んでいます。
そして、この4つが揃った世界に、ルール抜きで住んでいる人がいます。
不安型の人が経験しているのは、これとほぼ同じ形
愛着スタイルは、人が親密な関係でどう振る舞うかの傾向を4つに分けた考え方です。くわしくは入門記事に書きましたが、そのうちのひとつが「不安型」です。
不安型の傾向は、ざっくり言うとこうです。
相手の気持ちが、確かめても確かめても足りない。
返信が遅いだけで、気持ちが離れた証拠に見える。
確認したい。でも確認すると重いと思われるので、確認できない。
さっきの表の右側と、並べてみてください。
- 相手の気持ちが本物か確認できない
- 確かめる手段が存在しない
- 確かめようとすると、関係のほうが壊れる
- 宙づりのまま過ごすしかない
同じです。番組が賞金1,000万円というルールで人工的に作っている状況を、不安型の人は、賞金もカメラもないところで日常的に生きています。
だからこの番組は、見ていて妙に疲れる
『ラブキャッチャー』を見ていて、他の恋愛リアリティーショーより消耗する感じがある人は、たぶん気のせいではありません。
この番組は、視聴者にも同じ条件を課しているからです。私たちも、誰が本物か確かめられないまま8話を過ごします。
そして人間は、確かめられない状態に置かれると、だいたい同じことをします。
証拠を集めはじめる
SNSで「◯話のあの表情がおかしい」「あの言い方は嘘っぽい」という投稿が増えるのは、そのためです。情報が足りないとき、人は情報を増やすのではなく、手持ちの情報を細かく読み込みます。
問題は、細かく読み込んでも精度が上がらないことです。前回の記事で書いたとおり、同じ行動が本気と演技の両方から出てくるので、拡大しても手がかりは増えません。
いったん決めて、安心しようとする
もっとよくあるのがこちらです。「もうこの人はマネーで確定」と決めてしまう。
これは推理として正しいからやっているのではなく、宙づりが苦しいから、結論を先に置いて楽になろうとしているだけのことがあります。決めたあとは、その説に合う場面だけが目に入るようになります。
不安型の人が現実の恋愛でやるのも、これと同じ形です。「たぶん嫌われた」と先に決めてしまえば、少なくとも宙づりからは降りられる。絶望のほうが、不確実より楽なことがあります。
ここに、この番組のいちばん残酷な仕掛けがある
参加者の立場で考えると、もっとはっきりします。
不安になった参加者が取れる行動は、ほぼ2つしかありません。
| やること | 起きること |
|---|---|
| 相手に確かめようとする | 疑っていることが伝わる。本物だった場合、その相手を傷つける |
| 確かめずに我慢する | 不安が消えない。演技だった場合、そのまま最後まで気づけない |
どちらを選んでも、損をする側の可能性が残ります。これは参加者の性格の問題ではなく、ルールがそう設計されているからです。
そして——ここが書きたかったところですが——この構造は、賞金がなくても現実の恋愛にそのまま存在します。
相手の気持ちを確かめる完全な方法は、現実にもありません。聞いても答えは言葉でしか返ってこないし、言葉は本心の保証になりません。私たちは全員、賞金のないラブキャッチャーをやっています。
私が20代でずっと間違えていたこと
正直に書くと、私はこの「確かめられなさ」に耐えるのが本当に下手でした。
相手の返信が遅いと、理由を考えました。考えると、だいたい悪いほうの結論が出ます。そして結論が出た瞬間に、こちらから関係を降りていました。降りれば、少なくとも確かめなくて済むからです。
いま思えば、あれは失恋ではありませんでした。不確実さに耐えられなくて、自分で終わらせていただけです。相手が何を思っていたかは、いまだに分かりません。確かめる前に終わらせたので、確かめようがない。
だから『ラブキャッチャー』を見ていると、参加者ではなく自分の20代が画面に映っているような気持ちになります。
宙づりに耐えるための、現実的な考え方
「耐えましょう」だけでは何の役にも立たないので、私が実際に使っている考え方を書いておきます。
① 確かめられないことと、危ないことは違う
相手の本心が分からないのは、その関係が危険だからではありません。他人の内面が原理的に見えないだけです。不安型のときは、この2つが同じものに見えます。
② 判断を、締め切りのある形にする
「この人は本物か」は答えの出ない問いですが、「あと3回会って、そのとき自分がどう感じているか」は答えが出ます。問いを、答えの出る形に置き換える。番組で言えば、正体を当てにいくのをやめて「この場面はどう読めるか」に切り替えるのと同じことです。
③ 先に結論を置いていないか、自分に聞く
「あの人はマネーで確定」と思ったとき、それは推理なのか、楽になりたいだけなのか。この確認は、番組でも現実でも同じように効きます。
正体が分かる日は来る(現実には来ない)
番組が救いなのは、最終回に答えが出るところです。10月中旬、全員の正体が明かされます。
現実の恋愛には、あの回がありません。誰も正体を明かさないまま、関係だけが続いたり終わったりします。
だから私は、この番組を答え合わせのために見ていません。答えが出ない8話をどう過ごすかの練習として見ています。そこだけは、現実とまったく同じ条件だからです。
あなたはいま、誰かを「確定」させていませんか。
もっと知りたい人へ
この記事で書いた「確かめても確かめても足りない」感覚を、正面から扱った本があります。人の顔色への敏感さや傷つきやすさといった特徴と、そこからの向き合い方までまとめられています。
岡田尊司『不安型愛着スタイル 他人の顔色に支配される人々』(光文社新書)
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出典
- 番組公式リリース(放送日程・賞金・形式) … 株式会社AbemaTV(PR TIMES)
- 出演者・番組情報 … リアルサウンド
本記事は心理学の知見を参考にしたエンタメ・自己理解コンテンツであり、医学的診断や心理カウンセリングではありません。特定の出演者の心理状態を断定するものでもありません。愛着スタイルは人を分類して決めつけるための道具ではなく、自分の傾向を振り返るための枠組みとして紹介しています。

