あいの里シーズン3の主題歌が『見つめていたい』なのは、番組の本質を言い当てている

恋リア解剖

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『あいの里』シーズン3の主題歌が発表されました。ポリスの「見つめていたい(Every Breath You Take)」です。

これを見て、少し手が止まりました。

あの曲は、世界でいちばん誤読されているラブソングとして知られているからです。そして誤読の中身が、この番組が扱っているものと正確に重なります。

あの曲は、ラブソングではない

「見つめていたい」は1983年のポリスの代表曲で、結婚式で流れることもあるほど広く愛されています。

ですが、作詞したスティングは、繰り返しこの曲がラブソングではないと語ってきました。1983年のNME誌のインタビューでは、こう述べています。

「嫉妬と監視と所有についての曲だ」

スティングはこの曲を「とても不吉で醜い」とも表現し、優しいラブソングとして受け取られていることは正反対の誤解だという趣旨の発言を残しています。着想のひとつはジョージ・オーウェル『1984年』の監視社会だったとも語られています。

曲が書かれたのは、スティングが最初の結婚生活の破綻を経たあとでした。

なぜ、これほど誤読されるのか

理由は単純です。音が優しいから。

穏やかなメロディ、揺らがないリズム、静かに繰り返されるフレーズ。音の表面と、言っている内容が、正反対を向いています。

そして——ここが本題なのですが——これはまさに、愛と執着が現実で見分けられない理由そのものです。

「見ている」は、愛にも監視にもなる

相手をよく見ている、というのは、ふつう良いこととされています。

  • 変化に気づいてくれる
  • 言わなくても察してくれる
  • いつも気にかけてくれる

これらは、恋愛において最上級の褒め言葉です。

ところが、まったく同じ行動が、別の名前で呼ばれることがあります。

やっていること 愛と呼ばれるとき 執着と呼ばれるとき
相手の変化に気づく よく見てくれている 監視されている
連絡の頻度を保つ 誠実 束縛
予定を把握している 思いやり 管理
離れたくない 深い愛情 不安の押し付け

行動そのものには、どちらの名前もついていません。名前は、受け取った側と、その関係の状態が決めます。

当サイトでずっと書いていることと、同じ構造です。距離を取る行動が、演技にも本気にも見えるのと、まったく同じ形をしています。近づく側でも、同じことが起きている。

愛着スタイルで言うと、これは「不安型」の風景

愛着スタイルは、人が親密な関係でどう振る舞うかの傾向を4つに分けた考え方です(入門記事はこちら)。

そのうちのひとつ「不安型」の傾向は、ざっくり言うとこうです。

相手の気持ちが、確かめても確かめても足りない。
だから見る。細かく、絶えず、見る。
本人にとっては、それは愛情表現です。

「見つめていたい」が不気味なのは、歌っている本人が、自分を加害者だと思っていないところです。愛しているから見ている、という理屈が最後まで崩れない。

そして現実でも、たいていそうです。監視している側は、自分が愛していると思っています。だからこの曲は結婚式で流れます。

この主題歌が『あいの里』に合っている理由

ここまで書いてきて、選曲の意味が見えてきます。

『あいの里』は35歳から60歳の男女が共同生活をする番組です。参加者には過去があります。番組の宣伝文句は「バツあり、ワケあり、持病あり」。つまり、一度うまくいかなかった人たちが集まっている。

うまくいかなかった理由は、多くの場合、愛が足りなかったからではありません。愛のつもりでやっていたことが、相手にとっては別のものだった——という食い違いのほうが、はるかに多い。

「見つめていたい」は、その食い違いを1曲で再現している歌です。作った本人が「不吉な歌だ」と言い続けているのに、世界中がラブソングとして聴いている。曲そのものが、誤読の実演になっている。

35歳以上の恋愛を扱う番組の主題歌として、これ以上に的確な選曲はちょっと思いつきません。

見るときに、ひとつだけ持っておきたい問い

10月6日の配信開始から、参加者は誰かをよく見はじめます。気づく、覚えている、先回りする。画面はそれを「良い場面」として映すはずです。

そのとき、こう考えてみてください。

これは、相手のためにやっているのか。
それとも、自分が不安にならないためにやっているのか。

外から見ると、この2つは同じ行動です。違いが出るのは、相手が「大丈夫だよ」と言ったあとです。そこで止まるなら前者、止まらないなら後者かもしれません。断定はしません。差が出やすい場所、という程度の話です。

正直に書くと、私は後者をやったことがあります。相手のためだと思っていました。本当は、確かめないと自分が持たなかっただけでした。あのとき誰かに「それは愛じゃなくて不安だよ」と言われても、たぶん納得しなかったと思います。

だからこの曲が結婚式で流れるのを、笑えません。

もっと知りたい人へ

「見る」ことが愛にも監視にもなる、その手前にある不安を扱った本があります。人の顔色への敏感さや傷つきやすさといった特徴と、そこからの向き合い方までまとめられています。

岡田尊司『不安型愛着スタイル 他人の顔色に支配される人々』(光文社新書)

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出典

本記事は心理学の知見を参考にしたエンタメ・自己理解コンテンツであり、医学的診断や心理カウンセリングではありません。楽曲の解釈は作詞者本人の公表インタビューに基づく紹介であり、歌詞の引用は行っていません。

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